* 笑顔で
"絶対" なんて言葉は、可能性のある限りは使いたくない。
だが、そのくらいの大きな存在であることを、知覚する以前に反応せざるを得ないのが、現状。
どれだけ平静を装っていても、意思に反したこの手の震えが顕著に物語っている。
虚勢だと承知の上で、これは武者震いだと言い聞かせて、絶対なる存在を真直ぐ目指す。
自分とはあまりにもかけ離れた存在を前にして、何かを考える気にもなれなかった。
だが、気を抜いていると月の地下奥深くから放たれる、深く強い気に飲まれそうになる。
ここはそもそも、人がいて良い場所ではないんだろうな・・・他人のように考えを巡らせる。
俺の思考ごときじゃ、正直なところ理解できない。
どちらかといえば、理解したいと思わない。
誰もがこの場所にいることを、恐れていない奴はいないだろう。
それでも、誰の歩みは止まることを知らない。
誰もが奴よりも大きな想いがあるのだろう、単純な話だ。
先を目指すことを決して止めない中で、唐突な考えが脳裏を掠めた。
俺はどうしてここにいるんだろう、なんで逃げ出さないんだろう、と。
勝算の見出せない争いならば、傷みを伴わないうちに降りたほうが賢明だ。決まっている。
この道を降りることぐらい、いつでも出来ただろう。
そんなことは随分前から判っていたことだ。
考えれば考える程に空っぽになっていく、それは自分が奪われていくような感覚。
ここで終わってもいいと思った、あの時に似ている。
ただ、誰かが傷ついて、死んでいくのが許せなかっただけだったんだろう。
その "誰か" って言う大きな言葉の中に、俺も含まれていただけなんだろうと。
その強い感情は俺に向けられたのではなかったとしても、でもその泣き声と涙に心が震えた。
覗き込んで来る瞳は大きくて、心配してくれているのか不安の色を隠せていない。
それでも、かち合うと心臓は跳ねた。
「そんな顔すんなって、なんでもねぇから・・・。」
口からそんな言葉が出たのは、なんでもないことの裏返しか。
そして、絡んだ視線を外したのは、そんな自分を気取られたくなかったから。
跳ね上がった心臓が止まらないのは、小さな手が俺の手を包み込んできたからだ。
包み込んでって表現は適当じゃないんだろう、でも確かに俺は包まれていた。
俺の腕で収まるほど小さい体なのに、その小さな手は俺を包んでしまえる。
触れた箇所から伝う熱さは、空っぽの俺を簡単に満たしてしまえる。
確信に似たある種の諦めが、心の中を占める。
逃げ出さないのは、このお節介な連中が好きだからなんだろう。
特に、純粋なこいつのことを。
その手は冷えていたのに触れた箇所から伝う熱さは、空っぽの俺を簡単に満たして溢れ出す。
きっとこれから何度もこんな風に空っぽになっては、この熱を求めていくのだろうと。
この小さな手に支えられて、この小さな手を守りたいと願うのだろうと。
包まれた手を握り返すと、視線は俺に向いた。
不安そうに覗き込んだ眼に笑顔をくれてやると、不安に揺れていた瞳が笑う。
「とっとと、あの野郎ブッ倒して帰るか・・・。」
この手の震えは自然と止まっていたようだ。
この笑顔に紐付けられた "これから" を前にしてみれば、なんてことはないのだと。
「そうだね、みんなで・・・帰ろう。」
その瞳が一瞬曇ったことなんて、気にならないほどに。
ラスダンでの若の一言メッセージが好きで、好きで・・・。
あと、帰る場所のないことをリディアがこの時から意識してるといいなぁって。
でも、若は一緒に帰る気満々だといいなぁ。むくわれん感じがすきです。(ぉ