あなたを待って明けた朝の、いつものこと。
まどろみの冷たい空気の中、リビングの向こうにぼんやりとしたシルエットが浮かんだように見えた。
そのシルエットがどうであれ、寝ぼけ眼のままこの家の主の姿を思い浮かべる。
私の個人的な感情を抜いても、こんな時間に帰ってくる人なんて限られている。
そうでなければ、泥棒か何かに違いないけれど、と
覚めた頭で考えてみれば、それも回答の一つになりえただろう。
もっとも、そのときのアロマには思う術もなかったのだけれども。
シルエットの主が近づくにつれ、そのシルエットは次第に真実味を帯びていく。
山高帽のラインをなぞるように目で縁取って、視線の降りた先の優しい眼差し。
ようやく貴方と確信する、その一瞬が好きで、好きで。
「おかえりなさい、先生。」
漏れた優しい安堵に満ちた溜息が、部屋いっぱいに満たす朝の冷えた空気きれいにを裂いていく。
私だけの、早朝の戯れ。