* 王子様 (1)

なんだか体がふわふわする。

月の光が私の頬を照らしていたけど、
霧がかったように目の前がぼやけてた


お祝いの席だからって勧められて、
初めてお酒を飲んでみたら・・・こうなっちゃったみたいだ。

まずいなぁ・・・とは、思っているの。

自信がない、なんて言いたくない・・・けど、
今、見えてる世界が現実なのか、夢なのかもわからない。



それでも遠くにいる君の姿は、はっきり見えた。
隣の席に座ってたギルバートと並んでも負けないくらい、いつもと違って見えた。
素敵なお姫様と踊る足取りは軽く、私の知らない笑顔で笑う。

知らない王子様を見ているようだった。




綺麗で華やかなドレスが似合ってて、その光景は、とても自然なものに映った。
手をとったお姫様は、まだ幼かった頃に見た絵本の中の人そのままだった。

そのお姫様と結婚するんじゃないかな、って噂は
心に響いてしまえば、重い気持ちでいっぱいになるから、
ほんの少し耳の奥を震わせるだけで、通り過ぎていった。



良かったね、おめでとう!!

笑顔でそんなこと言ったら、きっと不機嫌な顔して
私にわかりやすいように、怒っちゃうんだろうな。



・・・なんてね、もう、そうじゃない。
だって、君は知らない王子様だもの。





知らない何処を想うように様に、遠くををぼんやりと見ていると、
目の前が波のように揺れる。

急に体が宙に浮いたような感覚がしたから、
きっと、見かねた誰かが運んでくれてるんだと思う。

誰がこうしてくれるのかなんてわからない。

意識が曖昧になってるのもある、けれど・・・
お姫様のように抱きかかえられてるのはわかる。

だとしたら見知らぬ王子様は、なんて酷い人なんだろう。
自分がお姫様でも何でもないって、思い知らされているみたい。
そんなこと、最初から知っていたのに。



下らないこと考えたとは思った・・・けど。

夢の中くらい、お姫様の気分になってみたい・・・。

酔ってゆっくりとしか動かない身体を動かすと
今の私を支えてくれる、この見知らぬ王子様の首元に固く腕をまわした。



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