* 王子様 (2)

そんな動作を少しの戸惑いで許してくれると
私の体を支えてくれる腕に、瞬間、不自然な力がこめられる。

変に感覚があるだけで、妙な現実味を帯びているだけなのに。
こんな時にまで、他のことを思い浮かべることが出来ない。

だって、ココロもカラダも、
このぬくもりが君なんだって、全力で誤解してる。


きっとそうなんだ、今すごく心地いいからだ。
こんなに君のこと考えちゃうのは。

だって、目の前が霞がかってるのに、この腕が誰のものかもわからないのに、
この包まれている感じが、すごくイケナイんだ。

カラダは私が思うよりも正直だ。
この心地よさも似過ぎてて、心に伝う前に反応してる。



私は君が与えてくれた感覚しか知らない。
それに代わるものなんて、わかりっこない。
君以外のぬくもりを知らないなんてことを、今更思い知らされる。

わたし、ばかみたい。
しかも、とんでもないばかみたいだ。
とても優しい腕も、広い胸も、君のものしか知らないなんて。



長い階段を上りきって、不意に柔らかい場所に下ろされると
窓から差し込む月の光が、私たちの影を浮き彫りにしてた。

私を抱えて両手が塞がっていたのに、どうやって扉を開けたんだろう??
離された感覚がなかったから、やっぱり全部足で開けたのかな。
この王子様も、案外粗野なのかもしれない。

そんなどうでもいいことをぼんやり考えていると、
優しい腕のぬくもりと、シーツのひやりとした肌触りのギャップが、私の背中を駆け上がる。


そのぬくもりから離れるのが嫌で、伸ばした腕に力を籠めても、
私の手首が捉えられて、首にまわした手をゆっくり解いてしまわれるだけ。

その気になれば私の手ぐらい、すぐに簡単にほどかれてしまうのに。
月明かりの下で、二つの影はまだ繋がってる。

言葉が私の口を割った。



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